健やかな成長のために

子どものお口を守る

口腔外傷

健やかな成長のために

子どものお口を守る

口腔外傷・歯みがき習慣・むし歯予防

東京医科歯科大学大学院 宮新美智世准教授 監修

 

口腔外傷の応急処置

ケガは全身を見てから!

歯が折れ、ゆれ、抜けるほどの衝撃を受けた場合

は、急いで脳や目に異常がないか調べます。全身を

見て、脳と目は優先的な対応を要します。

子どもが前歯を失う原因の第1位が歯のケガで

す。歯と口の外傷は、歩きたての12歳、やん

ちゃな9歳前後で最も多く、原因は室内での転倒

が最多です。年齢が高くなるとスポーツ活動のな

かでの外傷が増えてきます。もしも・・・

 

歯が抜けた時:緊急度No.

歯は急いで戻せば、再び使える可能性があります。

ラップやビニールで包んで乾燥を防いで1時間

以内に歯科医院を受診し、再植を受けましょう。

元の位置に正しく戻して

周囲の歯と接着剤でつないで補強(固定)すれば、

食事も安心です。

 

・受診が難しい場合は牛乳に入れて冷蔵しましょう。

・学校、救急車に歯の保存液が備えられている場合は、

その中では常温で1日後まで安全に保管できます。

・水道水は塩素を含むので、

抜け落ちた歯を洗うのには不適当です。

 

歯が折れたりグラグラしたら?

その日のうちに受診するのがお薦めです。

歯のかけらがあったら拾って持参して下さい。

半日くらい経つと意外に痛みが強まることが

あるので放置は危険です。

食後や寝る前は、綿棒を指で軽くほぐしてから

うがいくすりを付け、受傷歯や歯肉を拭いてください。

 

前歯1本だけ歯の色が変わったら?

歯をぶつけた際に、歯の中で内出血が起きている危険性が

あります。後で歯の神経(歯髄)が死んでしまう危険性

6割ほどありますので、定期的に歯科医院で

チェックを受け続けましょう。

 

乳歯と永久歯

乳歯のケガや重篤な乳歯のむし歯により、永久歯の歯

の作りや生え方に影響を与えることがあります。年2

くらいは歯科医院でチェックを受けましょう。

5歳以降になったら後続の永久歯が無事にはえてくるか、

よくチェックしてもらうことが大切です。もし永久

歯に異常が出た場合は、速やかな治療が有効です。

 

唇や歯ぐきが切れたら?

歯と口の周りは、傷跡を残したくない部位です。

土やアスファルトなど、たとえ粉のような小

さな異物でも傷中に残ると、醜い傷跡になる

ことがあります。ケガをした日に十分洗浄

してもらいましょう。

開いた傷は縫った方が早く治ります。また、

同時に歯をぶつけていることがあるので、

必ずチェックを受けましょう。

 

歯ならびの異常に注意を…

指しゃぶりやおしゃぶりで、出っ歯などの歯列

不正になることがあります。また歯ならびの異常は、

ケガのしやすさに直結します。歯ならびは、

治療しておくことがお勧めです。

現在、指しゃぶりそのものは特に問題視されて

いませんが、3歳になったら歯ならびを(かかり

つけの)歯科医院でチェックしてもらいましょ

う。手や口、全身を使って楽しく活動することが

増えて、指しゃぶりやおしゃぶりの使用が減れ

 

ば、歯ならびはよくなることがあります。

  

一生おいしく食べるには

子どもの歯を大切に

 

 20歳までに歯の本数が少ない人ほど、歯を失うスピードが速まります。子どもが身につけた良い習慣は、成人のむし歯と歯周病を阻止します。

 赤ちゃんの時…離乳食は薄味にして甘い飲み物(ジュースなど)と強い甘みは避けましょう。

 歯磨き大好きに育てるためには、歯が生える前の赤ちゃん時期のスキンシップが大切です。

 まずは赤ちゃんを、ふんわりマットに寝かすか抱いて、唇やほっぺを優しくタッチし、快さを伝えましょう。触れられ慣れてくれたら、お口にそっと指をいれて歯ぐきや舌をなで、心地よさそうになったら大成功。やさしい声掛けも大切です。

 

歯が生えてきたら?

 食べた後のタッチ習慣を作っておいて、ガーゼで歯をはさむようにして歯をぬぐいましょう。慣れてきたら幼児用の小さい歯ブラシで短時間ずつ歯に触れます。

 ポイントは、快適に・怖くしない・痛くしないことです。かかりつけの歯科医院にて、その子に合った磨き方を習うのも有効です。

 いつもは優しい親が、歯磨きとなるとリキむのでは子どもは怖がります。完璧を目指さないで、少しずつ何回かに分けてもよいのです。歯ブラシの毛先が歯ぐきにあたると痛いです。

 

 歯に対して直角に歯ブラシをあて、小刻みに振動させます。ふんわり快適な場所で、終わったら徹底的にほめる、子どもは快適なことに敏感です。

 

むし歯を防ぐ食習慣

 口の中は腸や皮膚の様に、多くの細菌がいます。そこに来た糖分が病原菌の栄養になり、むし歯や歯肉炎が生じます。したがって、食べ方でむし歯も歯肉炎も予防できます。適切な食習慣、嗜好が身につくのは、子ども時代です。

 薄味に慣れると、食物の香りやおいしさが楽しめ、強い甘味にとらわれにくくなります。また「だ液」は口の中の糖分などを洗い流すと共に、むし歯菌が作った酸で溶けてしまった歯を修復(再石灰化)します。ちょくちょく間食したり、甘い飲物を飲んでいると、「だ液」は働く時間が無くなります。同じ食べるならまとめて食べることが、最も簡単なむし歯予防です。

 その他、フッ化物塗布による予防やシーラントが有効です。かかりつけの歯医者さんにご相談ください。

 

 

【ご注意】子どもが、歯ブラシを持って遊んでいる時に、転んで歯ブラシが喉に突き刺さる事故が起きています。2歳未満のお子さんの歯は、親が磨いてあげましょう。